山本容子新作展 「鏡の国」 (油彩・版画)

3月29日(月) - 4月10日(土)
11:00-19:00 (最終日1階のみ17:00まで) 日曜・祭日休廊

 

「鏡の国」 山本容子

 チェスを始めた。「鏡の国のアリス」の世界がチェスの国と知ったから。ルールブックを片手に駒を手にとる。キング、クィーン、ナイトにビショップそして城壁の形を模したルーク。何やら中世の西洋の物語がイメージ出来る。それぞれの駒の働きを学びながら、駒に個性を感じてみる。立派だけれど動きのにぶいキングを守るのは、オールマイティに盤上を駆け廻ることの出来るクイーン。ナイトを乗せた馬は、意表をついて跳ね上がり、司教様のビショップは、鋭い命令をつきつけるのが得意。コーナーワークの苦手なルークは、実直な働き者だ。そして、六十四の白黒の枡目で出来たチェスの国では、市民の顔をしたポーンが横一列に並んで、時間が動くのを待っている。ゲームが始まると物語が幾重にも紡ぎ出されてゆくわけだ。
 ところが、「不思議な国のアリス」を書いた後、キャロルはチェス盤を「鏡の国」の中に拡げてしまった。ゲームはルールに乗っとってこそはじまる。その場所が、モノを写したり、光を反射させる鏡の、平面なのにこちらの国と同じ奥行きをもったその中ではじまるなんて、答えのないなぞなぞを仕掛けられた気分になる。でも、物語は言葉で書かれているから読むことは出来るはずだ(翻訳の力を借りて)。その事実を胸に、なぞなぞの答えが知りたくてゲームをはじめてみた。
 まず一手、アリスの姿をしたポーンを前進させなくては。さてとその前に、私は目の前のチェス盤の上に鏡を一枚立ててみた。版画家の眼は、反転の力で成り立っている。リバースのリバースはどのような世界なのだろう?

〈Tea Party〉
〈kucing〉
〈Through the Looking-Glass〉
〈Through the Looking-Glass〉
2010年 ソフトグランド・エッチング、コラージュ、紙 300×300m

 

山本容子 略歴
1952年 4月埼玉県に生まれる。 8月に大阪府堺市に転居。
1975年 第27回京展紫賞受賞。 アート・コアギャラリー(京都)で初個展。
1976年 ガレリア・グラフィカにて東京での初個展を開催。 第1回アート・コア賞受賞。
1977年 第2回京都洋画版画美術展新人賞受賞。 第2回現代版画コンクール展コンクール賞受賞。
1978年 京都市立芸術大学美術学部美術専攻科修了。 第2回日本現代版画大賞展西武賞受賞。
1980年 京都市芸術新人賞を受賞。
1983年 第4回韓国国際版画ビエンナーレにて優秀賞受賞。
1992年 『Lの贈り物』で第23回講談社出版ブックデザイン賞受賞。
1997年 ルイ・ヴィトン『トラベル・ノートブック』原画展(国内10カ所、パリ、ハンブルグ)
1998年 すみだトリフォニーホール(東京)壁画完成。舞台美術・衣装を担当したオペラ「Momo」上演。
2000年 ハノーバー国際博覧会(独)の日本館「EXPO2005愛知」PRブースで和紙車『蛍』発表。
2002年 「山本容子の美術遊園地」展(〜03年、高知県立美術館、和歌山県立近代美術館、富山県近代立美術館、うらわ美術館、他全10ケ所)。
2003年 山本容子 -わたしの時間旅行-展(パリ、東京、名古屋、福岡、大阪)開催。
2004年 『ポートレートの現代』展(うらわ美術館)『Time of My Life -永遠の少年達-』(東京オペラシティアートギャラリー)に出品。 新東京国際空港第一旅客ターミナル、ステンドグラス完成。
2005年 Opera Lesson展−音楽と花をテーマに/ヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡)
2006年 絵と本の博覧会−日本の絵本芸術展 新潟市新津美術館(新潟)、下関市立美術館(山口)、萬鉄五郎記念美術館(岩手)
2007年 山本容子展「Musical life」 ―音楽とともにある一つの人生/ミューザ川崎シンフォニーホール
Ma belle epoque 山本容子 私のベルエポック展/ジェイアール京都伊勢丹、伊勢丹小倉店
2008年 山本容子展  過ぎゆくもの/ガレリア・グラフィカ(東京)
Jazzing 山本容子展/名鉄丸越百貨店美術画廊 (金沢)
「山本容子のワンダーランドへようこそ〜壁画を巡る物語〜」展/伊勢丹新宿店(東京)
2010年 山本容子 新作展 「鏡の国」/ガレリア・グラフィカ(東京)

[主なパブリック・コレクション]
東京国立近代美術館/高知県立美術館/埼玉県立近代美術館/栃木県立美術館/いわき市立美術館/韓国国立現代美術館/大阪府堺市