新妻 篤展 蒼氓 (彫刻)

1月13日(月) - 1月25日(土)
10:00-18:00 (最終日17:00まで)

 初めのひと彫り。鑿を拒絶するような石の硬さを感じる。遅々として進まない原始的な作業でも、次第に石をハツるための動きを体が覚えていく。心地よく打撃を与えることに慣れてきた頃にはもう次の段階が見えてくる。道具を切り替えながら石の凸凹を人体の秩序に定めていく。
 あらかた形になってきた頃合いで、詰めていくイメージが弱くなってきたら、作業を止めて別の作品に取り掛かる。中途に放置したものを時々眺めては明確に削る場所がわかるまで待つ。見えたら彫る→目的が薄まる→眺めて待つ。。。同じことを幾つもの作品で並列しながら彫り進める。中途の石像が増えていく。そこに日々の生活の機微が混ざり合う。次はどんな人物が出来上がるのか。正確な設計図がない状態で、初期衝動を頼りに迷いながら彫り進めるのはいつも刺激的だ。
今まで生きてきた中で出会った、市井の人々の姿を拠り所に、自分の造形欲求と石の成りたがる形を拮抗させていく。徐々に作品それ自体が独立した存在として立ち上がり始める。
言葉で説明できる意味を超えて、石像の中に人それぞれが投影できる「同族への眼差し」を感じる、そんな彫刻が並ぶ空間を見たいと思った。














作家詳細ページへ